ポーランド民族舞踊入門


1.5つの民族舞踊
2.ポロネーズ(1)
3.ポロネーズ(2)
4.「マズルカ」
5.クラコヴィアク
6.まとめ








※「スーパーピアノレッスン ショパン」(NHK出版, 2005)掲載の拙稿に加筆したものです。無断転載はご遠慮下さい。平岩理恵

4.「マズルカ」

今日マズルカと呼ばれている舞曲(ポーランド語ではマズレク)は、ワルシャワを中心としたポーランド中西部のマズールィ地方の名から取られたものです。この一帯では3拍子の踊りが主流で、テンポや振り付け、地域の違いなどによって様々な名称をもっていましたが、リズムパターンには共通する部分がありました。これをマズレク・リズムと呼んでいます。
<共通の特徴>
・基本的なマズレク・リズム:タタタンタン|タータン
・アクセントが通常弱拍の3拍目や2拍目に置かれる
・伴奏(ベース)に現れる5度のドローンや持続音
19世紀最初の頃、マズレク・リズムを持つ数々の舞曲の中から、違いが特に際立つマズル、クヤヴィアク、オベレクという3つの舞曲名がポーランド中に知れわたるようになりました。リズムの各特徴は以下のとおりです(※ただいま準備中)。
これら3つの舞曲を巧みにブレンドし、マズレクという新しい観賞用の楽曲形式を生み出したのがショパンです。ショパンのマズルカの中で、元となった舞曲のそれぞれの要素がどこに現れているかを近視眼的に探すことはあまり意味のあることではありません。ですが、マズレク・リズムの持つ特徴を知っていれば、たとえば1拍目に常にアクセントを付けて弾くのはおかしい、ということがお分かりになるかと思います。これはワルツとの大きな違いですね。