2006年6月12日〜現在

2013年02月24日
2013年--ルトスワフスキ生誕100周年
ポーランドを代表する現代音楽作曲家ルトスワフスキ。よほどの音楽通か現代音楽の専門家でなければ、ルトスワフスキの音楽を愛聴したり知っているという人は稀だと思います。難解、不協和音ばかり、日音楽的…といったイメージの先行する現代音楽ですが、ルトスワフスキの音楽の中にはユーモアの溢れるもの、知的好奇心をくすぐられるもの、色々な作品があります。アトリエでも扱いのある「子供のためのルトスワフスキ」は入門には最適のCD&ブックレットのセット商品となっています。生誕100周年を迎える今年、ルトスワフスキの音楽の扉を少し開けてみませんか?

(by管理猫)

2009年02月21日
ブレハッチ日本ツアー間もなく終了
2月6日のピアノ協奏曲(ベートーヴェンの第4番)を皮切りに始まったラファウ・ブレハッチ日本ツアー2009も残すところ明日の大阪シンフォニーホールでのリサイタルのみとなってしまいました。とても練られた彼らしいプログラムのリサイタルは、聴く者の心を深く掴み、どの会場でもあたたかな拍手に包まれます。楽譜に忠実に、奇をてらわぬ演奏をするラファウ。それは決して表面的な几帳面さや自己主張をしない消極性ということなのではなくて、音符と音符の間に書かれていることにこそ作曲家の本意があり、そこにいかに迫れるかという部分に演奏家としての本当の能力が求められているのだ、と断言するラファウの信条の結実した演奏なのです。来年のショパン・イヤーに向けて、ショパンの2つの協奏曲を録音することも発表されました。ますます将来の楽しみなピアニストですね。日本の聴衆が大好きだといつもにこやかに答えるラファウ君に、これからもまた日本に気持ちよく来ていただけるよう、私たちも今後ますます、応援していきましょう。

(by管理猫)

2008年08月31日
ポーランドから戻りました
8月末、久しぶりにポーランド&チェコへ出張して来ました。ワルシャワ市内のなんと様変わりしたこと! 新世界通りから旧市街入り口の王宮広場までの舗装改修工事が完全に終わり、輝きに満ち溢れた街並へと生まれ変わっていました。トラムの停留所では到着時間見込みを表示する電光掲示板も設置されたり、旅行者にとっても大変便利な街へと変貌を遂げつつある様子が手に取るようにわかりました。しかし同時に物価の上昇も顕著。物価そのものというよりも、ズウォティの対円相場急騰が旅行者の財布には重くのしかかります。とはいえ、近年のユーロの高騰に比べればまだ過ごしやすい国と言えるでしょうか。シェンゲン圏内での移動では入国・出国審査が無いため、せっかくポーランドに入国した記念のスタンプがパスポートに押されなくなってしまうのは残念ですが、これも時代の流れ、便利になったことを喜ぶべきでしょうね。ポーランドでは2012年にウクライナと共催でサッカーの「ユーロ2012」を開催します。これに向けて全国各地で急ピッチにインフラ整備が行われている模様。今後4年間で更にどんな変貌を遂げるか、非常に楽しみです。

(by管理猫)

2008年08月19日
TV東京『100円玉に愛をこめて』
8月27日(水)21:00〜 テレビ東京で放送の番組『100円玉に愛をこめて』では、ポーランドに多く滞在するチェチェン難民たちの抱える深刻な問題を紹介し、募金を募ります。

(by管理猫)

2008年08月19日
TV東京『100円玉に愛をこめて』
8月27日(水)21:00〜 テレビ東京で放送の番組『100円玉に愛をこめて』では、ポーランドに多く滞在するチェチェン難民たちの抱える深刻な問題を紹介し、募金を募ります。

(by管理猫)

2008年07月19日
TBS『THE 世界遺産』にヴィエリチカ登場!
7月20日(日)18:00〜18:30 TBS系列で放送の番組[THE世界遺産]で『ヴィエリチカ岩塩坑』が取り上げられます。地下300m以上深くまで掘られて700年以上の採掘の歴史を持つヴィエリチカはポーランドの古都クラクフのすぐ郊外に位置します。是非ご覧下さい!

(by管理猫)

2008年06月15日
『ワイダ、祖国を撮り続けた男』
6月15日(日) 22:00〜23:30 NHK教育[ETV特集]にて、『アンジェイ・ワイダ 祖国ポーランドを撮り続けた男」』が放送されます。監督の最新作でアカデミー賞にもノミネートされた『カティン』や往年の名作『鉄の男』『地下水道』などを取り上げながら、監督の素顔に迫ります。アトリエも微力ながら番組制作に協力しておりまして、観る価値のある大変力のこもった番組になっていることを請合います!是非ご覧下さい!

(by管理猫)

2008年05月15日
ショパン博物館改修へ
ご無沙汰してしまいました。もうすっかり新緑の季節になってしまいましたね。さて、ショパン愛好家の方に重要なお知らせです。実はワルシャワのショパン博物館、2008年5月18日より2010年3月1日まで改修のため閉鎖されることになってしまいました!2010年のショパン・イヤーを目指してますます中身を美しく、また充実させることが目的なのだとは思いますが、約2年間も中に入れないとは…!! この間にポーランドを訪れるご予定の方はどうぞご了承下さい。モーツァルト・イヤーの前も、ウィーンのモーツァルトハウスが改修でずっと入れなかったりしましたから、同じようなことなのでしょうね。
もう一つのお知らせは、毎年恒例のことなので皆さんよくご存知と思いますが、同じくワルシャワのワジェンキ公園、そしてショパンの生家であるジェラゾヴァ・ヴォラでのショパン・コンサートが、今月から始まります。毎週日曜日それぞれ2回行われますのでどうぞお楽しみに! 特にワジェンキ公園の野外コンサートは無料で誰でもお散歩のついでに聴くことができますから、是非お立ち寄りを!

(by管理猫)

2008年03月31日
春到来!復活祭〜夏時間
今年の復活祭(ポーランド語でWielkanoc)は、ここ数十年の中で最も早い日付の3/23日でした。復活祭は「春分の日の後最も早い満月の次の日曜日」と決まっているからなんですね。復活祭になりうる日付は3/22〜4/25と非常に幅が広いのですが、いつも興味深いと思うのは、どの日付であっても、復活祭が過ぎて初めてポーランドは一気に春らしくなる、ということです。キリスト復活を祝う宗教祝日であると同時に、長く厳しかった冬から生命の息吹に溢れる春の訪れを喜び祝う、という昔ながらの民俗的な伝統が生きているのかもしれません。
そして3月最終日曜日から、サマータイムも開始です。一日が1時間早く始まるようになるのですね。日本との時差も7時間になりました。これから日が一日ごとに長くなります。街中ではもうオープンエアのカフェを準備し始めたりしながら、誰もが首を長くして夏の訪れを待ちわびている様子が伺えます。
ゴールデンウィークや日本が梅雨を迎えて鬱陶しい6月は、ポーランドでは初夏のとてもさわやかな季節になります。是非訪れてみてはいかがでしょう。

(by管理猫)

2008年02月18日
ポーランド民俗音楽CD入荷しました
かねてよりご要望の多かったポーランドの民俗音楽を収録したCDをいくつか取寄せてみました。各地方に伝わる民謡や器楽を、その土地で歌い演じ継がれるままに採集したものばかりです。いわゆる芸術音楽の領域とはまた違ったジャンルですので、最初お聴きになると非常に驚かれるかもしれませんが、マズル、クラコヴィアクなど後々ショパンにも繋がる民俗的リズムの源流を知るにはまたとない素材でしょう。

(by管理猫)

2007年12月31日
良いお年を!
2007年も残すところあと数時間。今年もご愛顧いただきまして本当にありがとうございました。多くの方々にアトリエHPを訪ねていただきましたこと、また様々なご要望をお寄せいただきましたこと、本当に感謝しております。間もなく明ける2008年が皆様にとってより素晴らしい一年になりますように!これからもどうぞよろしくお願いいたします。

(by管理猫)

2007年11月15日
ポーランドの音楽番組を聴く愉しみ
インターネットの普及や各種メディアのデジタル化が目覚しい昨今、テレビやラジオも国境を越えて視聴することが急速に可能になってきています。ポーランドも例外ではなく、多くの番組をインターネット上で楽しむことができます。
その中でもここでおススメしたいのは、ポーランド・ラジオ第2です。音楽をはじめとする文化情報ばかりをずーっと放送しているチャンネルで、クラシックを中心に実に沢山の録音を放送、またワルシャワ等で行われるコンサートの生放送も頻繁に行っています。時には、なかなか日本ではお目にかかれないアーティストのライブ演奏を臨場感あふれる解説付きで(ただしポーランド語ですが!)聴くことができたりもするのです。
ポーランド・ラジオのインターネット配信はこれまで第1と第3は行われていましたが、第2についてはごく最近になってやっと聴取可能になりました。なのでまだご存知ない方も多いかもしれませんね。ポーランド音楽に限らず、クラシックやジャズがお好きな方は、是非チャレンジしてみてください!音楽以外にも文学の朗読やラジオドラマなどの番組もあるので、ポーランド語のヒアリングにもよいと思います。ポーランド・ラジオのHPからDwojkaを選択してください。

(by管理猫)

2007年9月30日
最も寒さの厳しい季節
近年の異常気象はポーランドも例外ではありません。今年の夏は日本並みに30度超の毎日が続いたとか。それが9月に入ると気温は一気に10度台へ。朝晩は一桁台とのこと。緯度が日本よりはるか高くに位置するポーランドは、秋分の日を境に日照時間がどんどん短くなり寒さは本格的になってきます。
ところが建物中をぬくぬくと暖めてくれるセントラルヒーティングの設備が動き始めるのは大体10月に入ってから。9月の下旬に今年のように冷えこむ日が続くと、他に暖房設備を備え付けていない一般家庭はひとたまりもありません。部屋の中で凍える数日間を余儀なくされるのです。外気が一日中氷点下より上がることのない真冬よりも、この季節の寒さの方が堪えると言えるかも知れません。
こんな季節は、ちょっと厚着をして、「黄金の秋」と呼ばれる紅葉を楽しみに、公園散歩というのがいいですね。日本の紅葉ももう間もなく。日本もポーランドも、四季の移り変わりを愛でる気持ちは同じようです。

(by管理猫)

2007年7月23日
湿度40%は蒸し暑い?
今年はまだまだ梅雨前線が勢力を弱めず、7月だというのに梅雨寒な毎日が続いていますね。屋内の湿度はこのところ毎日70%以上を記録しています。洗濯物はおろか、手拭用のタオルですらずっとジメジメ、なかなか乾きません。
ところで、ポーランドは年間を通して非常に空気が乾燥していますが、湿気に慣れないポーランド人にはなんと湿度40%ですら、蒸し暑い、と感じられるそうです。ポーランドの乾燥ぶりは、大抵の家のバスルームに「換気扇が備え付けられていない」ことからもよくわかります。集合住宅では多くの場合、窓すらついていないのです。それにもかかわらず、シャワーを浴びて一時間も経てば、浴室内はすっかり乾いて、水滴一つ残っていません。極めつけは、「バスルーム内に物干しがある」ということ。バスタブの上空に、いくつもの細い棒が吊り下げられているのです。ここに、バスタオルはもちろんのこと、様々な洗濯物が干されます。更なる驚きは、自分の頭の上に洗濯物がぶら下がっている下で、平気でシャワーを浴びてしまう、ということ。普通の日本人の感覚では、そんなこと論外ですよね。ところがなんと、乾燥機があるわけでもないのに、こうした洗濯物が、ものの数時間で、あっという間に乾いてしまうのです。なんともうらやましい限り!当然カビなんかも生えませんしね。
ところで洗濯モノ、何でわざわざ屋内に干すのだろう、と不思議に思われませんか? 天気のいい日くらい、外に干せばいいのに…。でもその理由は、真冬を迎えた頃によーくわかりました。何しろ外気温は連日の氷点下。濡れた物など表に出せば、あっという間に凍ってしまいますものね!

(by管理猫)

2007年5月27日
ブレハッチ来日
間もなく2005年ショパンコンクール優勝者のラファウ・ブレハッチ君が熱い期待に応えて再来日します。今回はソロリサイタルのほかに、オーケストラとの共演によるショパンのピアノ協奏曲も披露。また、リサイタルでは今回初めて、バッハやドビュッシーなどショパン以外の作曲家を取り上げるとのこと。彼のピアノの世界がぐんと拡がるようで本当に楽しみですね!まだ北海道や長野の公演にはチケットの余裕があるようです。興味のある方は是非お早めにどうぞ!
今年は11月にクリスティアン・ツィメルマンの来日、またブレハッチと時を同じくしてヴァイオリンのコンスタンティ・クルカなど、ポーランドのアーティストたちが多数来日します。まさに日ポ国交回復50周年にふさわしい文化交流イヤーになりそうな予感です。

(by管理猫)

2007年4月4日
聖週間〜復活祭
関東では桜が満開の今頃、ポーランドはもう聖週間真っ只中です。聖週間とは、復活祭を迎えるまでの一週間のこと。おなじみイースターエッグや猫柳の枝、羊やひよこ、うさぎといったモチーフで街中が華やかになる季節です。この時期によく演奏されるのは「Stabat Mater」。聖母マリア様の悲しみをうたった宗教曲で、様々な作曲家がこの題名を持つ曲を残しています。ポーランドの作曲家ではシマノフスキの「スターバト・マーテル」が有名ですね。通常はラテン語の歌詞で書かれるのですが、シマノフスキはこれをポーランド語で作曲しました。各声部の非常に美しいソロや合唱になった部分の神秘的で神聖な響きはなんともいえません。
復活祭の楽しみといえば料理でもあります。ポーランド語で「センカチ(切り株)」と呼ばれるバウムクーヘンやパウンドケーキなど、やはり卵を沢山使ったケーキや料理が食卓をにぎわせます。またカラフルに色づけ・デザインを施された卵も、教会で聖水をかけてもらって家で一通り飾った後は食べることができます(ゆで卵なんです!)。私が経験した面白い習慣は、各自一つずつ卵を手に取り、家族や友人同士、互いの卵を軽く打ちつけ合うのです。最後まで割れずに残った卵の勝ち、その人にはその年の幸運が約束されるそうです。イースターが終わればもう本格的な春。一年の中で一番活力に満ちた季節へ突入です。

(by管理猫)

2007年3月19日
もうすぐ夏時間
日本よりはるかに高い緯度に位置するポーランド(ワルシャワ:北緯52度/東京:北緯35度。ちなみに北海道の緯度はおよそローマ〜ミラノと同じなのです!)。春分の日を境にして日の長さは日本よりもずいぶん長くなります。それに呼応するように、大気の中にも春らしさが感じられるようになります。街角のいたるところではチューリップや猫柳の枝が売られ始め、人々の目を楽しませてくれます。空気はまだまだ冷たくても、桜を愛でる日本人の感性同様、春を喜ぶ気持ちは万国共通なのでしょうね。
長い日照時間を有効に使うために、他の欧州諸国と同様ポーランドもサマータイム制を採用しています。3月最終日曜日から、時計の針が一時間進むのです。冬時間の現在、日本との時差は+8時間ですが、夏時間移行後は+7時間となります(例:日本時間正午のとき、ポーランドは早朝5:00)。再び冬時間に戻るのは10月末のことですから、1年を通してみるとサマータイムの期間の方が長いということになるのですね。
ところで横幅の広いヨーロッパも英国を除いて標準時は一緒なので、EU諸国の中で最も東側にある国の一つであるポーランドは他の国に比べてより早く日の出を迎えることになります(ヨーロッパを横断旅行するとよくわかるのですが、例えばワルシャワとパリとでは日の出の時刻が1時間以上も違うんです!)。夏至の頃にはもう朝の4時には朝日がさんさんと照っている、なんてことにもなるのです。ポーランドでは是非、ちょっと早起きして、ぜいたくに太陽の光を浴びてみたいですね。

(by管理猫)

2007年1月30日
ホットビールの季節
昨年から今年にかけて、ポーランドも異常気象続きのようです。暖冬で雪が全く積もらぬ異例のクリスマスを終えたと思えば、年始にはヨーロッパ中を襲った強風の嵐。そして1月下旬には大雪が降り、各地の交通が麻痺しました。これから先はどのような冬になるのでしょうね。
さて、本格的な冬の時期になるとどうしても恋しくなるのがホット・ビール。ポーランド語でgrzane piwoと書きます。「ビールを温めたりして美味しいの?」「泡が飛んでしまうのでは?」と皆さん不審がられるのですが、どっこい、とても美味しくて体の温まる飲み物なんです。ホットワインをご存知の方なら、その甘くてスパイシーな味わいをご想像頂けると思いますが、ポーランドのホットビールも、同じような「味付け」をしてあります。お店や各家庭によってレシピは色々あるようで、卵を入れたりするものもあるようですが、基本的にはビールに木苺のシロップとシナモン、クローブなどの香り付けスパイスを入れて加熱します。
泡がふきこぼれないように上手に火にかければ出来上がり(電子レンジでもOK)。発泡感もしっかり残って、体にじわりと染込んでいくオトナの飲み物となります。日本産のビールでも美味しく作れましたので(実験済み♪)、是非お試し下さい。小さな缶ビール1本分でも十分に良い気持ちになれて、体も芯から温まりますよ。

(by管理猫)

2007年1月5日
あけましておめでとうございます
2007年が明けましたね。皆様のあたたかい応援を頂き、アトリエも初の年越しを無事に迎えることができました。ありがとうございました!今年が皆様にとっても良いことの沢山ある一年になりますように。そしてまた少しでもそのお手伝いをできるようなアトリエに成長していくように、当方も頑張って行きたいと思います。
今年は丁度、日本とポーランドの国交が回復してから50周年という記念すべき節目の年にあたります。日ポ間の文化交流もますます盛んになるでしょうし、またビジネス分野でも、一流日系企業のポーランド進出が相次いでいます。当然、両国に関連するイベントも多く行われるに違いありません。アトリエでも機会があるごとにそのご紹介をしていきたいと思いますので、どうぞご注目ください!また皆様からの情報提供やお問い合わせも大歓迎です。
それでは、本年もどうぞよろしくお願いいたします!

(by管理猫)

2006年12月26日
ポーランドのクリスマス
日本ではクリスマスが終わるやいなや、すっかり街中のデコレーションが変わってお正月向けになってしまいましたが、ポーランドではまだまだ今日26日もクリスマスの真っ只中。24日はWigiliaといって、一日禁欲的に静かに過ごし、25・26日の2日間はそれこそ日本のお正月とお盆が同時に来たような、家族的でまた豪華なお祝いが繰り広げられます。ビゴスやピエロギなどおなじみのポーランド料理に加えて様々なケーキも食卓をにぎわせるのです。
クリスマスの音楽もポーランドは少し独特。日本で耳慣れているようなクリスマスキャロルはあまり一般的でなく、もっと伝統的で、ポーランド音楽のリズムとポーランド語の歌詞を持った独自のkolędaと呼ばれるジャンルのクリスマスソングが数限りなく存在しているのです。そのほんの一部をご紹介したCDをアトリエでも今回ご用意しました。ポーランドでは年が明けてからもクリスマスツリーやkolędaでその気分を楽しみ続けますので、今からでもまだ遅くは無いかもしれませんよ。ポーランドのクリスマスソングをどうぞお試しください!

(by管理猫)

2006年11月28日
ポーランド室内歌劇場来日中!
モーツァルト・イヤーも残り僅かとなりました。この一年の締めくくりにふさわしく、「モーツァルト劇場」の異名をとるポーランド室内歌劇場が11月半ばに来日、6つのオペラ作品を全国で上演しています。過去3回の来日で絶賛された「フィガロの結婚」「魔笛」「ドン・ジョヴァンニ」に加えて、今回は「コジ・ファン・トゥッテ」「高級からの誘拐」「皇帝ティトの慈悲」の3作品も一挙公開です。アンサンブルの非常に整ったこの歌劇場のオペラは、観る者、聴く者を本当に幸せな気分にさせる力を持っています。今からでもチケットの入手可能な公演も多数あるようですので、皆さんも是非足を運んでみてはいかがでしょうか。公演詳細はこちらからご覧下さい。

(by管理猫)

2006年10月31日
ポーランドの歌姫来日!
11月半ばから日本ツアーを行うワルシャワ室内歌劇場のソリストでありポーランドを代表するソプラノ歌手であるマルタ・ボベルスカさんが、同歌劇場より一足先に来日しました。室内合奏団と共に、東京とその近郊でソロリサイタルを行うのです。彼女はこれまでにも、「フィガロの結婚」スザンナ、ケルビーノ、「魔笛」パミーナ、「ドン・ジョヴァンニ」ツェルリーナなどのレパートリーを歌ってきていますが、歌手としての円熟を増してきた今、ケルビーノ役を演じる彼女の歌声はもうオペラの舞台で聞くことはできません。ところが、今回のこのリサイタルでは、あのうっとりするようなケルビーノの「恋とはどんなものかしら」を何年ぶりかで聴くことができるのです!
あざとさの全くない、どこまでも素直な歌声でありながら、そのうるおいあるふくよかな歌声に満たされた空間に自分もまた浸るとき、えもいわれぬような幸せを感じられる、そんなソプラノなのです。どこまでも澄み切って、安心して耳を傾けていられるような声色で、まるで聴衆の心に直接語りかけてくるような、と形容するのが相応しいほどです。
今回のリサイタルでは、これらオペラのアリアだけでなく、アメージング・グレースなどもう少しポピュラーな作品、映画音楽やミュージカルの有名なナンバーも取り入れられています。演奏会の回数と会場が限られてしまっているのが非常に残念ですが、普段は声楽に興味がないという人にも是非、聞いていただきたいオススメ演奏会です。公演詳細はこちらからご覧下さい。
因みに、今回のリサイタルではボベルスカさんの名前が「マリア」という芸名(?)になってしまっています。日本国内で売り出すための戦略なのでしょうが、やはりせっかくなので本名で覚えていただきたいと思い、ここでは本名でのご紹介としました。

(by管理猫)

2006年10月12日
ポーランド音楽事情
ポーランドの公立小中高校の中には「音楽学校」というものがあります。音楽学校にも二種類あって、本当に音楽専門の学校で、普通教育を行う学校とダブルスクールで通うような形になるものと、普通教育+音楽教育を一手に引き受けるハイブリッドの学校との2種類の形があります。楽器も(良し悪しの程度はさておくとして)在学中は貸与されますし、当然学校教育の範疇で行われるグループ・個人レッスンは無料、ということになります。お金持ちの家庭であるかないか、家に楽器があるかないか、両親が音楽家や愛好家であるかないか、ということに関わらず、全ての子供たちに対して音楽に触れ、学ぶチャンスが平等に与えられているというシステムを、とても素晴らしいな、と私は思っていました。楽しみとして音楽に触れたい子供たちも、将来プロを目指そうという子供たちも一緒に音楽が勉強できる環境がしっかりと整えられているのです。
しかしもう一つの事実もあります。それは、プロになろうと音楽アカデミーに進学する場合を除き、義務教育の期間を終えてしまった生徒たちには音楽を続ける可能性が閉ざされてしまう、という問題です。いまだに、多くの一般ポーランド人家庭にとって、何であれ「楽器」というものを購入し維持していくこと、また個人でレッスンを定期的に受けていくことというのは、やはり経済的には夢のまた夢なのです。せっかく義務教育の間に音楽に親しんだ生徒たちも、高等教育に進む頃にはそれを断念しなければならない。日本のように「アマチュア音楽家」になることのできない厳しい現実がポーランドにはあります。
しかし楽器を使わないでできる音楽も存在します。それは「合唱」。上に書いたことが直接の理由かどうかはわかりません。しかしポーランドには、殆ど全ての高等教育機関、教会、地域の文化センターごとにまず間違いなく「合唱団」が存在しています。しかもそのレベルは相当高いものが多いのです。「のど」そのものが楽器なのですから、誰もが体一つで参加できるのが合唱の魅力です。日本ではアマチュア・オーケストラで活動していた私は、ワルシャワ留学中に所属できるアマチュア団体がないことにひどくがっかりし、それでも何とか音楽活動できないかと、それこそ藁をもつかむ気持ちでとある合唱団に飛び込みました。ポーランド人たちが嬉々として歌を歌い、声を合わせることの楽しみと力強さとを味わっていることを肌で感じることができた感動は、今も記憶の中に新鮮です。ポーランド国内に無数に存在する教会のお堂の素晴らしい音響空間で歌声を響かせるという快感はなかなか日本で味わえるものではありません。
ポーランドには優れた合唱作品も沢山あります。中世の音楽に始まり、19世紀のモニューシュコ、シマノフスキ、現代のグレツキにいたるまで、どの時代にも大変魅力的な合唱曲を生み出す伝統があるのです。機会がありましたら是非、それらの合唱音楽にも親しんでみていただければと思います。

(by管理猫)

2006年10月4日
芸術の秋
ポーランドを含め、ヨーロッパ諸国では10月からが新たな文化シーズンの始まりとなります。長い夏休みを終えて、各地のフィルハーモニー、オペラ座、劇場などが日々の活動を再開するわけです。そして同時に、今から年末にかけての時期というのは海外のアーティストや芸術団体がこぞって来日公演をするシーズンでもあります。今年はポーランドからも多くの音楽家たちがやって来ます。大きなものでは、2005年にショパンコンクールで優勝を果たした新星ラファウ・ブレハッチの全国ツアーリサイタル(11月一杯)があります。また世界で唯一、モーツァルトの全ての舞台作品をいつでも上演できる「モーツァルト劇場」として知られるワルシャワ室内歌劇場は今年で4回目の来日となります(11月中旬〜12月下旬)。今年はちょうどモーツァルト・イヤーでもあり、なんと全6演目(これまでのフィガロ、魔笛、ジョヴァンニの他、コジ、後宮、ティトが加わります)を引っさげてくるとのことで、さながらミニ・モーツァルト・オペラ・フェスタを楽しめるという趣向です。この歌劇場のトップ・ソプラノ歌手でもあるマルタ・ボベルスカは同劇場より一足先に来日し、ソロでのリサイタルを予定。これまでケルビーノ、スザンナ、ツェルリーナ、パミーナ役で国内でも非常に高い評価を受けている彼女の類まれなるクリスタル・ボイスがオペラ以外でも楽しめるのですから、必聴ですね!
他にもポーランドの著名ピアニストやアマデウス室内オーケストラなどの来日が予定されているようですし、音楽以外にも先日お知らせした映画「ニキフォル」のロードショーなど、様々なポーランドのアートに触れる機会がありそうです。アトリエでも情報を入手次第、順次お知らせしていきますのでお楽しみに!また、皆さんからの情報提供やレビューなどもお待ちしております。

(by管理猫)

2006年9月22日
ワルシャワの秋
チェコには「プラハの春」という音楽祭がありますが、ポーランドには「ワルシャワの秋」という現代音楽の祭典があります。第49回目を迎える今年は9月22〜30日まで開催、ワルシャワ各地でコンサートが行われます。「抽象的・幾何学的で難解、不協和音ばかりでメロディがない」というイメージが強く、また実際にそうであることの多い現代音楽は、クラシックファンにとってもなかなか敷居が高いのは偽らざる事実です。私自身、なかなかこの「ワルシャワの秋」には足が向かなかったのですが、一度、意を決して演奏会に飛び込んでみたことがあります。
すると、思いもかけなかったような発見があるのですね。一つには、「現代音楽」と簡単にくくってしまうけれども、その中には実に多様な種類があるのだということ。いわゆる「クラシック音楽」以上に、演奏家の解釈によって全く異なる表現になること。また、実際に存命の作曲家たちが作ったものが初演、自演されたり、解説を自ら書いていたりするわけですから、まさに音楽の生まれる瞬間、変化していく過程を私たちも目の当たりにすることができます。これには、音楽を聞いて心地よく感じるか否か、ということとは別に、とても面白いと思いました。モーツァルトだってベートーヴェンだってショパンだって、その音楽は存命中にあっては当時の「現代音楽」であったわけですからね。
それにしても、ポーランドには世界的に活躍する作曲家が多いですね。すぐに思いつくところではペンデレツキ、グレツキ、キラルなどでしょうか。ポーランドが作曲家や指揮者を多く輩出する理由を、かつてあるポーランド人は皮肉げに「この国にはいい楽器も、それを買えるだけの財力も無いから、優れた演奏家は出ない。だから皆、ペンと紙、あるいは棒一本で活動できる仕事で力を発揮するのさ」などと言っていましたが、その真偽はともかく、上述したような作曲家たちが世界中で活躍しているのは嬉しいことだと思います。日本でももっと、彼らの作品が紹介されるよう、アトリエも願ってやみません。CDも少しずつ、取り扱いタイトルを増やして行きたいと思っています。

(by管理猫)

2006年9月11日
森へ行きましょう
最近、ポーランド民謡に関するお問い合わせが相次いでいます。実はポーランド人に親しまれている歌の中で、日本人の誰もが間違いなく知っている曲というのが1つ、あるのです。それは「森へ行きましょう」。某海苔屋さんのCMでもかつて使われていたので、メロディだけならきっと誰しもが口ずさめるはずですね。その歌詞は他愛もないもので、少女が森を歩いていると若い猟師とばったり。その後、彼は少女を探し回りります。少女の方もバターを塗ったパンを手に彼を探すのですが、我慢しきれず食べてしまいます。二人が出会ったときにはパンは既に少女のおなかの中。少年は少女をなじります…。というのが大まかなところですが、要するに森の中で逢引する若いカップルのお話と言ってしまっていいでしょう。
ポーランド人も、日本人がこの歌を歌えて、しかも日本語の歌詞まであると知ると大変に驚くようです。ポーランド人と会う前にはぜひ、日本語版の「森へ行きましょう」を覚えて、彼らの前で歌を披露してみましょう。一気にお互いの距離が縮まることは間違いなしです! アトリエでも、目下「森へ行きましょう」ポーランド語版の収録されたCDを入手すべく調査中です。ご興味ある方はお問い合わせ下さい。

(by管理猫)

2006年8月30日
ニキフォル
先日、"Mój Nikifor"(邦題「ニキフォル」)というポーランド映画(クシシュトフ・クラウゼ監督/2004年)の試写会に足を運んできました。ニキフォルという、言語障害を持ち、そうと知らなければただの物乞いにしか見えないような身なりの、独学で身に着けた絵を描き続けた一人の男と、その生活を支えた後見人の物語です。現代美術の分野で世界的に知られる人物というのですが、私はこの映画で彼の存在を初めて知りました。絵の良し悪しは私にはよくわからないのですが、その色彩の斬新さと懐かしさの同居したような感覚に目が惹きつけられました。
映画を見ながら、(これは哀しいかな、一種の職業病ですね…)ついつい映画の俳優たちがしゃべるポーランド語と字幕の日本語を批判的に見比べてしまうのですが、この映画、翻訳された方は本当に苦労されただろうな、としみじみ思いました。何しろこのニキフォルは言語障害を持つ男という設定なので、発音が全く明瞭でありません。しかも正しい文法ではしゃべっていないので、主語が誰であるのかわからなくなる瞬間も何度もありました。私なら、台本がなければとても「きちんと」訳出することはできないだろうと思います。
実際、この字幕制作をされた方はその困難さにもかかわらずかなりうまく訳出をしていたと思うのですが、逆に気になってしまったのは、あまりにもニキフォルが「きちんと」した台詞回しをしているような字幕になっていたことです。彼の言葉使いのたどたどしさと、その中に骨太な真意が垣間見えるような様子を、もう少し反映できていれば良かったのに、と感じました。大多数の日本人鑑賞者にとっては、字幕だけが意味を汲み取る唯一の手段になるわけですから、映画における字幕の存在意義と責任は絶大です。
その意味でも、上記のこと以上に大変だっただろうな、と思うのは、ポーランドはやはりカトリックに根ざした国であるという点といえます。ポーランド人にとって、クリスマスや復活祭がどんな意味を持つのか。教会や聖人とはいかなる存在であるのか。そういったことを習慣として知らない日本人にとっては非常に理解の難しい台詞がいくつもありましたし、またその訳出も、特に字幕という文字数の極端に制約された中では殆ど不可能とも思えます。日本語の字幕を通す限りでは、このニキフォルという男の宗教観を汲み取ることは難しいでしょう。
ともあれ、映画としてはとても良い内容を持つものだと思います。1960年代のポーランドをよく描き出しているという意味でも興味深いです。今年11月、東京都写真美術館にてロードショーですので、ぜひ皆さんも足を運んでみてください。

(by管理猫)

2006年8月22日
ヨーロッパの人名考
前回、作曲家などの人名とその格変化にまつわるお話をしました。でもポーランド語の難しさは実はそこにとどまらないのです。ヨーロッパの多くの人名(ファーストネーム)は、キリスト教の聖人の名前から取られている、ということは皆さんもご存知ですね。マリア、アダムなどなど。しかしこれらの名前は各国の中で各国語にあわせた形に変化してしまっています。英語でピーターと呼ぶ名前は、ペトロやペーテル、ポーランドやロシアではピョートルとなるわけです。当然綴りも変わります。例えばショパンのファーストネームはフランス語ではFredericとなってしまいますが、本来のポーランド語ではFryderyk [フルィデルィク]です。また逆に、ポーランド人が外国人の名前を呼ぶときにその人の名前をポーランド語化させてしまうこともしばしばあります。例えば、大バッハの「ヨハン」の部分はJan [ヤン]。ヴァーグナーやシュトラウスのファーストネームもRyszard [リシャルト]となります。そしてこのことを知らないととても驚いてしまうどころか、こんな作曲家いたっけ?ともなりかねないのが、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル。これはポーランドではJerzy Fryderyk Haendel [イェジィ・フルィデルィク・ヘンデル]となってしまいます。さすがに名字はそのままの綴りなので慌てる必要はありませんが、ヘンデルの祖先や子孫にこういう人がいるのかも、と一瞬冷や汗をかくことにはなるかもしれませんね。ちょっと話が横道にそれますが、その昔、ポーランドではショパンの名字を Szopen と書くのが一般的だった時代もあるのです。ですが、ポーランドでも最近は(とりわけ書き言葉においては)原語表記を使う傾向にあるようですから、どうぞご安心を!

(by管理猫)

2006年8月18日
固有名詞も格変化
前回のこのコーナーで「ポーランド語は外来語も容赦なく格変化させる」と書きました。実はこの現象、普通名詞に限ったことではなく、「固有名詞」についても言えるのです。
クラシック音楽に関して言えば、外国人作曲家や音楽家の名前もみんな、変化してしまいます。例えば今年はモーツァルト年ですが、ポーランド語では Rok Mozarta [ロク・モーツァルタ]となります(「〜の」という所有の意味を表すにはポーランド語では名詞を生格という格の形に変化させてやる必要があります。男性の場合語尾に"-a"を付けることで作ることができます)。ベートーヴェンの交響曲、と言いたければ Symfonia Beethovena [シンフォニア・ベトヴェナ]。アーノンクールの指揮で、に至っては pod batutą Harnoncourta [ポド・バトゥトン・ハルノンクルタ]となってしまうのです。ヴィヴァルディの四季、ならば Cztery Pory Roku Vivaldiego [チテルィ・ポルィ・ロク・ヴィヴァルディエゴ](語尾がiやyで終わっている人名は形容詞と見做され、形容詞の生格語尾"-ego"を取ります)。またドビュッシーの音楽であれば muzyka Debussy'ego [ムジカ・デビュッスィエゴ]となってしまいます。こうしてローマ字で書かれたものを見ればなるほどと想像もつくというものですが、これを会話の中で聞いたとき、パッと元の人名に辿り着けるかどうか。かなり難易度は高くなりますね。それは日本人が一般に見聞きしているカタカナ語とは発音も違いますし、読まない子音や余計な語尾が出現したりするからです。
これらをクリアしていくには、外国人の人名を、できるだけ「原語の綴りで」覚えることが重要になってきます。特に日本語では区別しにくいRやL、B, V, Wに注意を払うことが大切です(「ボレロ」を書いた某有名作曲家の名前をLaberと発音しても誰もわかってくれません!)。また仏語系の名前はもっと厄介で、読まない文字がたくさん含まれています。例えばビゼーはその綴りの最後に"t"が付いているということは知っておく価値があるでしょう。ミヨーがMilhaudという綴りだというのも意識していなければとても想像できませんよね。
ここでは音楽家の話ばかりしましたが、同じことは画家や作家、政治家などあらゆる国際的に名前の知られた人についても言うことができます。日本のメディアで誰もが当たり前のように使っているカタカナに写し取られた固有名詞は、一歩日本国外に出てしまうともう何の役にも立ちません。ポーランド人の名前だけでなく、他の外国人の名前も、できるだけ原語の通り覚えていくようにすると、応用の幅が広がっていくことでしょう。

(by管理猫)

2006年8月5日
音楽用語の不思議
最近、音楽関係の翻訳をしていて面白いことに気付きました。アレグロ、クレッシェンド、スタッカート、カンタービレ…など、もともとイタリア語の音楽用語は、日本語でもポーランド語の文章でもイタリア語のまま使います。ところが、日本ではドイツ語を採用している「アウフタクト」、あるいは英語の「シャープ」「フラット」、あるいは「スラー」などは、ポーランドではそれらの意味を表すポーランド語の単語がきちんと存在していて、それを使っているのです。
ポーランドでドイツ語や英語を使わないというのは当然のこととしても、不思議なのは、ならばなぜイタリア語だけは翻訳されることなくそのままなのか。日本でもポーランドでも「イタリア語はイタリア語で」という原則が同じところがとても気になり、あえて何か理由があるとすれば…と自己流に考えてみました。そして、イタリア語の音楽用語は「楽譜上に文字で書かれていることが多い」というのが一つの要因ではないだろうか、という考えに至りました。楽譜上に「crescendo」と書かれているのに、それをクレッシェンドでなく自国語で読み替える必要性は確かにあまりなさそうです(勿論その意味をよく理解した上で、というのが前提にはなりますが))。逆に、#♭など楽譜上では「記号」でしか表記されないものは、その呼び方が各国語でまちまちになるのも当然のことのように思えます。
当HPでも、小さな日ポ音楽用語辞典を公開していますが、ここに登場しないイタリア語の音楽用語は大体そのままポーランドでも通用すると思っていただければ結構かと思います。その代わり注意してほしいのは、ポーランド語は外来語も容赦なく「格変化」させること、です。例えば「スタッカート無し」というときに"nie ma staccata"となってしまいますので驚かれませんように。

(by管理猫)

2006年7月24日
鍵盤楽器の名前考
ちょっとマニアックな楽器の名前の話です。ピリオド楽器での演奏というのがごく当たり前に行われるようになって来た昨今、これまではあまりなじみの無かった楽器の名前もしばしば登場するようになりました。けれども、例えば鍵盤楽器に限って話をしますと、今いわゆる「ピアノ」と呼称している現代の楽器の前には、古典派の時代の主流であった「フォルテピアノ」というものが存在したこと、あるいはチェンバロやクラヴィコードといったものがそれぞれどういう特徴・仕組みを持ったものであるか、という知識は、ちょっとした音楽通ならばもう誰でも持っていておかしくない知識となりました。さて、こんな話題でポーランド人とおしゃべりする、という場面に出くわしたとします。それぞれの楽器の名前を、どうやって表現したらよいのでしょうか? ちょっと頭がこんがらかってしまうかもしれませんが、しばしお付き合いを。
まず簡単なところからいきましょう。日本語では「チェンバロ」という名前が一番浸透していると思われるこの楽器。チェンバロは伊語です。英語ではハープシコード、仏語ではクラヴサン、です。ではポーランド語は? 答えは仏語と同じ「クラヴサン」です。綴りは klawesyn となりますが、発音は少々仏語っぽくなって、日本語で「クラヴサン」と言うのと殆ど同じ感覚で大丈夫です。クラヴィコードはそのままポーランド語に移し変えた表記、klawikord となり発音は「クラヴィコルト」となります。
さて、本命はこれから。まずグランドピアノからいきましょう。いわゆる、普通ピアノのリサイタルを行うときに使う、あの大きなピアノです。これは fortepian [フォルテピアン]。「フォルテピアノ」ではないことに注意しましょう。フルコンのものを指すときにはさらに koncertowy を付けることもあります。次にアップライトピアノなど、小型のピアノ。これは pianino [ピアニーノ] となります。では、日本では「フォルテピアノ」と呼んでいる、あのモーツァルトなどの時代のピアノのことは、なんと呼べばよいのでしょうか? あまりのアクロバットに驚かないでくださいね。…なんとpianoforte [ピアノフォルテ] となるのです! つまり、ピアノとフォルテピアノの日本での呼称・概念とポーランド語のそれとは、全く逆になってしまう、というわけなのです。ですから、ピアニストやピアノ留学生の皆さん、ピアノの歴史などの話題が出てくるときにはどうぞ、用語に惑わされて混乱しないように、気をつけてくださいね!

(by管理猫)

2006年7月18日
レフ・カチンスキ氏
以前関西テレビで製作放映された「ワルシャワの秋」というドラマをご覧になった方も多いのではないかと思います。≪以下ネタバレ注意!≫このドラマ、シベリアに取り残されたポーランド人孤児たちを日本赤十字が救ったという史実に基づいて作られたものです。その主人公として登場するのがレフ・カチンスキ少年。ずっと後になって、彼の息子であるという、これまたレフ・カチンスキという青年が日本へ音楽家として訪ねて来た折に、その昔、父であるレフ少年が慕っていた看護婦さんと感動の出会いを遂げる、というお話でした。それにしても驚いてしまうのは、この主人公の少年の名前です。現ポーランド大統領の名前と同じではありませんか。今や双子支配、と世界中で噂になっている、あのカチンスキ氏です。意図的か否か、このドラマは今年になってからポーランドでも放映されたそうです。…ところで、一昨年、私がとある来日中のポーランド人音楽家たちに同行していた時のこと。何となくですが、テレビで見たことのあるような顔のマンドリン奏者がいるのに気づきました。何日かが経った頃、彼の方から私に話しかけてくるのです。『ワルシャワの秋』というドラマを知っているか、と。なんと、彼はレフ少年役を演じた男の子の、お父さんだったのです!同じ楽団に、奥様も同行していらっしゃいました。偶然の縁とは時に興味深い巡り会わせをしてくれるものですね。「レフ少年」も、普段から子役をこなす役者さんではない、とのこと。話を聞いてみると、ある日突然日本人クルーたちがやってきて、「小学校の1クラス分の子供たちを借りたいのだが…」と言って、たまたま彼のいたクラスの子供たちが撮影に駆り出されたという次第なのだそうです。あの素朴だけれども素直に心に届く彼の演技は、舞台ずれしていない子供ならではのものだったのかもしれませんね。

(by管理猫)

2006年7月9日
ポーランド人姓を考える
W杯もいよいよ決勝ですね。昨日3位が決定した開催国ドイツの代表チームではポドルスキやクローゼというストライカーが活躍しました。彼らはどちらもポーランド出身、幼い頃に一家でドイツに移住したポーランド人移民なんですね。明らかにこの人はポーランド系だな、という情報は、往々にしてその名字から得ることができます。ポドルスキ、のような「〜スキ」というのはその代表例です。音楽家も例外ではありません。日本でも知名度の高いスウェーデン人ピアニスト、ペーテル・ヤブロンスキーという人がいます。この人もきっとポーランド人の移民家系でしょう。この名字はポーランド語の綴りではJabłońskiとなるはずなのですが、まさにこの名字を持つポーランド人ピアニストもつい先日来日しました。1985年のショパンコンクールで3位入賞したクシシュトフ・ヤブウォンスキです。彼はポーランドに生まれ育ち、現在もポーランドで活躍しています。ですから名前の読みも当然ポーランド語的になっているのです。名前の読みというのはいつも難しい問題で、特にスラブ系の名前は「読みにくい、馴染みにくい」を理由に、勝手に「英語的」な発音に置き換えられてしまうことが非常に多く、このピアニストの名前も「ペーテル」の方に引きずられて「ヤブロンスキー」となっていたり、読み方を間違えて「ヤヴォンスキ」となっていたり、散々なありさまでした。知らない言語で書かれた人名の読みを、ろくすっぽ調べずに間違ったまま大々的に公表できる日本のメディアやプロモーターの神経の太さには恐れ入りますが、私は何よりも、そうして間違った名前の下に日本で活動を強いられるアーティスト(スポーツ選手も同様)に対し、いつも本当に申し訳ない気持ちで一杯になります。このサイトでは、できるだけ原語に近い発音の表記を採用していくことを心がけていきます。ですからもしポーランド人有名人の名前をどこかで見て、「あれ、本当にこう読むのかな?」と疑問に思われることがあれば、迷わずアトリエまでご一報下さい。小さな小さな活動ではありますが、このサイトから、「ポーランド人の人名を正しく読もう運動」を発信したいと思っています。

(by管理猫)

2006年7月2日
今年は何と言ってもモーツァルト!その全フルート協奏曲演奏、というコンサートに日曜日足を運んできました。ソリストは世界的フラウト・トラヴェルソ奏者の有田正広さん。楽譜も原典までさかのぼって作品と時代にできるだけ忠実な演奏を、というのがコンセプトでした。言葉にならないほど素晴らしく、歴史的にも類を見ないこの演奏会に、実はポーランドも一役かっていたということは、おそらく誰も知らないことでしょう。というのも「フルートとハープのための協奏曲」のモーツァルト自筆譜がクラクフのヤギェウォ大学図書館に所蔵されており、今回の演奏会でもそれが参照されたのです。アトリエもこの楽譜の入手のためにお手伝いをさせていただきました。モーツァルトとポーランドの意外な繋がり。他にも沢山のモーツァルト手稿がクラクフの地に静かに眠っています。

(by管理猫)

2006年6月25日
アトリエのオープンから早くも2週間。おかげさまで順調な滑り出しとなっています。蒸し暑いdusznoな毎日が続きますが、皆さんはいかがお過ごしですか?こんな季節、私はいつも暑いけれどカラっとさわやかなポーランドの夏、王宮や教会の中のひんやりとした空気を思い出して懐かしみます。旅に出たい今日この頃…。

(by管理猫)

2006年6月12日

ポーランド音楽と言葉のアトリエへようこそ!


アトリエポーランド、6月12日正式オープンしました!皆様のご要望を反映しながら少しずつ情報を増やしていくつもりです。どうぞ末永くご愛顧下さい!
ポーランドへの留学を考えている方、ポーランド音楽に興味をお持ちの方、ショパン以外にポーランドにはどんな作曲家・音楽家がいるのか興味があるという方、ポーランド語の通訳・翻訳者を探しているという方…皆さまどうぞお気軽にお立ち寄り下さい。

(アトリエポーランド代表 平岩理恵)